IT社会と個人情報保護 自治体による「個人情報」運用の技術的・社会的環境と課題
1. はじめに
シリーズ 02
2005.September 西邑 亨

© Nishimura,Tohru



2005年9月発行の、東京自治研究センター季刊誌「とうきょうの自治」58号に寄稿した報告を、そのまま収録しました。本サイトへの収録を快くお許しをくださった同センター事務局のみなさまに感謝します。なお、注にある参照先URLがいくつか変更されていためこれらを修正しました。それ以外は掲載時のテキストのままです(右メニューのトップから印刷用ファイルがダウンロードできます)。

1. はじめに

現在、「個人情報保護」が注目される背景には、急速に普及してきたIT(ICT)の技術的特性と、深化するIT社会の特性という、2つの問題が強く関与しているだろう。しかし、日本の個人情報保護法制が準拠する「OECD8原則」の「個人情報保護/情報資産保護」という考え方は、これらの特性に照らして不十分である。
 これに対して、ネットワーク社会の成長期以降成立した「国連ガイドライン」や「EU指令」は、普遍的な人権としての「プライバシー」を個人に対して保障しようとしている。しかしなお、データ主体(自治体にとっては主権者である地域住民)が負う「プライバシー」上のリスクは完全に排除できない。
日本において、自治体(行政機関)による地域住民の個人情報運用が公正・正当なものとして許容されるためには、「社会によるプライバシー保護」を制度として取り入れると同時に、主権者である地域住民と、統治機関である自治体の間での信頼関係の再構築(個人情報を運用する正当性の社会的形成)が必要だろう。
なお、本稿に先立ち2005 年6月9日に行った月例フォーラムでの講演スライドを http://www.ws4chr-j.org/Lab/NetworkSociety/SLIDE00.HTM で公開している。
 また、本稿ではITの持つ「通信」機能の重要性に注目する立場から、熟語として成熟している場合を除き、ICT:information & communication technology を使った。
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